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南極熊アイコンVIXEN AGA-1オートガイダーをLosmandyで使う

電気的にボタン操作を代行する仕掛け

そもそも、フリーストップ機構で優れた使い勝手の赤道儀Losmandy のGM-8 やG11に標準装着されているDual Axis Electronics(二軸電動、つまり赤経・赤緯モータードライブ)は、P.E.C.もあってかなりの追尾精度だが、いかんせん8分間我慢の、レチクルを覗きながらの補正入力作業がある。苦労しながらも、そのご利益から堪えていたが、VIXEN AGA-1が使えるのではないかと某A氏から示唆され、やってみようという悪戯心が生まれた。

と、いうのも、星見道具をステップアップしてくる段階で、VIXEN AGA-1にDD-1改造を装着したVIXEN GPというVIXEN純正自動追尾セットを経験し、その後、オライオンに主軸が移ったために、VIXEN GPにガイド鏡と二本載せては重すぎるので、デッドストック化していたからだ。これでも、なかなかキチンと合わないVIXENの極軸を補って、そこそこの追尾はできていた。だから、うまくLosmandy赤道儀に装着できれば、星野写真では十分追尾できるかも知れないし、最低限、P.E.C.の入力が自動化できそうだと思ったのだ。

VIXENによるDD-1のAGA-1改造済品内基板むろん、いずれはSBIG STVAstrometric InstrumentsのSkyWalker-Servovといった製品を組み合わせたいのだけれど、さしあたって懐具合が良くなるまで、これでやっていければ、と思う。第一、有るモノは有効利用したいじゃないか。
さて、思い立ったら吉日で情報収集にW.W.W.をサーフィンしてみるが、情報がない。なんとかVIXEN Sky Sensor 2000PCをSBIG ST-4に装着するための変換ピンアサインや配線例が見つかったので、ST-4に対応するのならそのまま突っ込めば良いかとやってみたが、駄目。やはりそんなに甘かぁない。

ぶつぶつ考えること二日。DD-1を眺めていて、ふと、なんでそもそもこれを改造しなくちゃいけないのだろう、と思い、開けてみた。なるほど、各コントロールボタンに信号が入っている。これかとばかりに、GM-8のControl Boxで同じ結線を試すことにした。

AGA1のRJ12ピンアサイン図材料・ ワイヤーストリップとハンダ付け

Losmandy のコントローラーなどをつないでいるのはRJ-12という6極のモジュラー。欧米ではISDN用らしいが、日本では規格が違う。普通の電話はRJ-11の4極で、部品は少々探すことになるかも知れない。
6芯のケーブルは専用の、プラグ圧着工具に備わるストリッパーで剥くと簡単。プラグ側の圧着はもちろん専用工具の出番で、手作業でできないわけではないけれど、あったほうが楽。持っている人が提供してくれた私は“ラッキー”。持つべきは良き友人なり。

あとは、両端を剥いて、片側は向きを間違えないように圧着し、一方はさらに芯線も剥いて、各スイッチの+側基板上ハンダ付け箇所へ重ねてハンダ付けするだけ。Losmandy のコントローラーケースは、うまいことにもう一本ケーブルが出せる幅の取出し穴になっている。AGA-1とLosmandyの各芯の信号は、右記のとおり(と思う)。

ロスマンディのコントロールボックス内基板 改造前ロスマンディのコントロールボックス内基板 結線後

実験成功 ─ 次はガイド鏡

こんなときに限って、続々とやってくる台風になかなか実験できなかった。が、やっと巡っていた星の見える夜。ようやく出来上がった改造品を試用し、ちゃんと追尾できていることが確認できた。主鏡へビデオカメラWAT-100Nを装着してP.E.C.の設定を代行させることが可能なのも分かり、安心。改造した甲斐があったというものだ。運用時に気をつける点としては、コントロール速度の設定がある。P.E.C.オンのときに使える低速側2速の範囲にしておかないと、AGA-1からの制御信号に対する移動量が大きくなりすぎる。

さて、できるとなると、P.E.C.記憶作業の自動化だけでもと思っていたのに、やはりガイドもさせたいという欲が出る。LosmandyGM8にOrion300mmでは荷が重いのに、さらにガイド鏡というのはちと辛い。そこで、一方で、最初はファインダーにでもと思っていた軽量miniBorgがなぜか手許にあるけれど、これで追尾をかけるには焦点距離が足りない。困ってカタログを眺めていて、アダプタリング発見。鏡筒を76ED鏡筒と合体させるという手を使うに思いいたった。これなら、76EDのヘリコイド部分の分だけ軽くなる。装着脚も悩んだのだけれど、結局、これまた手持ちのあったミザールのビデオアストロプレートVXの部品VX86リングを使うことにした。

望遠鏡もここまで使い込んだら、もう鏡筒に穴を開けるのに躊躇はない。ドリルでガリガリ穴をあける。鏡筒本体 の曲面とVX86リングの平らな底面の辻褄を合わせてフィッティングを良くするため、VX86リング底面両脇に防振ゴムを貼る。あとはボルトナットで固定し、鏡筒内側のボルト頭を艶消し黒で塗って完成。なかなか精悍に仕上がった…カナ?。

ようやく完成を見て、追尾実験も成功させたけれど、本番はまだだ。異常気象の台風続き、悪天候には勝てない。まぁ、悪天候が続くから、こんな改造をやってうさを晴らしているのではあるが。

余談 オートガイドにかかる手間

ところで、オートガイドで最大の手間は、言うまでもなくガイド星の導入だろう。できるだけ暗い星でもキャッチできたらとか、オフアキシスでとか、色々あるのだけれど、私には、それらはまだ序の口。神戸東灘の猛烈な光害の下では“どこか近くに見えている星をとにかく導入する”しか手がない。BORGのイメージシフターや誠報社の微動マウントなど色々試したけれど、未だにこれでキマリというほどの方法に至っていなかった。そんな中、調整範囲が広い上に非常に軽いので、前述のビデオアストロプレート用リングの流用は、かなり有望だと感じている。

SBIG STVが良さそうに思えるのは、必ずしも対象星を中央に導入しなくても良いらしいところ(違ったら失望)。AGA-1のような手軽さで、対象星が中央でなくても、画面内の適当な明るさの星を任意選択できる…なんて無理だろうなぁ。しかし、軽く・小さく・操作の単純なAGA-1が使えることには、それなりの魅力もある。これで電気を食わなきゃ満点なんだけどねぇ。

望遠鏡がたわむ、ガイド鏡がたわむ、位置がズレるetc etc....言い出せばキリのない精度の要求だけれど、重くなればもっと頑強な赤道儀が必要となり、全部が重たくなって、移動どころか普段の設置すら、考えただけで億劫になる。じゃあ、ドームでも作っておきっぱなしなら、ということが頭をよぎるが、今度は、肝心の住んでいる場所そのものが酷い光害地とあって、そんなものをこさえるのはまるっきりのナンセンスだとも思う。実際、何百キロという機材を車に載せて移動運用をやってる人たちには頭が下がるけれども、私にゃ、その移動をする時間もない。移動した先で曇ってたときの落胆たるや、想像に難くない。こうなりゃ、柔よく剛を制す、だ。さて、この軽量路線、どこまで突き詰められるやら。さらにオッサン熊の星見道楽は続く…

by 南極熊 - Daisuke Tomiyasu (2004年9月3日)

おまけ情報

広い世界、地球上にはもっと合理的かつ器用に知恵で物事を進める人たちがいるもので、WebCAMとパソコンソフトでもオートガイドできるようだ。私は試していないから大丈夫だとは言えないけれど、その情報だけはお伝えしておきたい。

まず、Webサイト http://www.barkosoftware.com/Software.html でフリーのソフトウェアを入手する。次に、Webサイト http://www.technoplus.nl/astro/lx200.htm の情報をもとに、接続のためのエミュレーション回路を自作する。自作に自信がなければ(あるいは部品の入手が困難など、まぁ理由は色々様々として…) http://www.shoestringastronomy.com で$25で売っているアダプタを個人輸入する手もある。恐らく、フリーウェア“ガイドドッグ”を活用する周辺機材は他にもあるだろうと思う。

いずれにせよ、これで、様々なマウントが安価なWebカムやMeade LPI といったCCDとパソコンが、ガイドシステムとして機能する、というわけ。

考えるまでもなく、もともとそうしたソフトウェアがチップに記入された単機能コンピュータとCCDの組み合わせでオートガイダーが成り立っているのだから、不可能なわけがない。わけはないけれど、誰が汎用パソコンでそんな機能を実現するソフトを書くか、だ。私は、あれこれ理屈をこねる前に欲しかったからという単純な理由で作ってしまったらしい、上のサイトの持ち主たちに敬意を表したいと思う。但し、これを実現するためにパソコンを購入するのでは、どこか本末転倒のような気がする。要は、AGA-1利用もそうだけれど、あるものを使って楽しくやろうよ、という感じかな。

*改造は自己責任で行ってください。本書に起因するあらゆる障害・不具合等について、当方は一切関知いたしません。

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DD-1改造
モータードライブのコントローラーDD-1は、販売されているままの状態ではAGA-1と組み合わせて使うことができず、現品をVIXEN社へ送っての有償改造が求められる。この改造後は、AGA-1に接続する、RJ-12プラグを持つ6芯の白い電話線様のケーブルが、DD-1からひょろひょろと伸びることになる。

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