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by Tele Vue85

85
TeleVue テレビュージャパンサイトへ

MOON

PLANET GALAXY THE SUN

天体望遠鏡にはど素人の私があれこれ書けるもんではないのかも知れないが、名だたるアマチュア天文家の諸兄には、その各Webサイトの著述を大いに参考にさせていただいたことを感謝しつつ、写真機材という光学機器をアマチュア時代から34年も触ってきた経験を土台に、ちょっとだけ書いておきたいと思う。釈迦に説法はお許しいただきたい。

Tele Vue 85 (エイティーファイヴ) について

辛口評価サイトscopeviewers.comの全体評価で、名だたる望遠鏡群─Astro-Physicsタカハシなどと並んで、アル・ナグラーの名声とともに、アイピースともども、文句なしのトップにランクする。85は特に携帯を熟慮した製品。天頂ミラーのエバーブライトダイアゴナルを含めて、収差とは無縁。そのシャープな星像とコントラストは、多くの評価記事が誉めたたえる、そのままだ。Astro-Physicsも素晴らしい望遠鏡だが、受注後に生産計画を立てるような状態。それに比肩される性能を、常時販売体制で提供している凄さも、評価されて良いのではないだろうか。

鏡筒を手にとって最初の感動は、そのクオリティの高さだ。フォーカスノブの滑らかさ、全く星像が移動しないトルクアジャスタ、そして、そのずっしりとした質感。聞き及ぶ、仕上げの高級さで売るクエスターほどではないのかも知れないが、「一生モン」と呼んで良い一本だと思う。

どうして小口径か。どうして大口径の望遠鏡にステップアップしなかったのか。ニュートン鏡(反射式)の20cm超クラスに興味がないといえば嘘になる。ドブソニアンにモータードライブという世界だってある。だが、そうした大口径のありがたみを存分に感じるには、見える場所で観望することも重要だろうと思う。つまり、都心のハンディを大口径で補うことを否定するわけではないけれど、常に移動することが念頭にある都心で暮らす者としての選択だ。或いは、海外遠征だって夢じゃない。だから、航空機に持ち込める「小さな大口径」(©TeleVue)を選んだ。さもなければ、スタースプリッターに手をつけていたかも知れない。

TeleVue85で初めて星を観た途端、決定的に感じたことは、言葉にするのは難しいが、TV85が見せてくれるのは光像(ヒカリ)、ということだ。当然、人間の目もカメラも光に感じているから、光を光として捉えきれるかどうかは、非常に大きな光学性能の違いだろう。CanonFD300mmf2.8Lと普通の300mm望遠の間にも、光を表現するか対象物を表現するかくらいの差があるが、その差と一緒だ。

また、本サイトの掲載画像でも、コンポジット(複数枚を合成して画質を向上させる手法)を施しているが、TeleVue85で観た星は、コンポジットする前の素材の段階で既にかなりの映像になっており、コンポジットの結果と眼視時の見え具合に大きな差がないことは、特筆しておきたい。

かつて、私がまだ中学生だった頃、五藤光学製の反射望遠鏡にニコンの接眼鏡で土星を見せてくれた友人がいた。私もM社製反射を持っていたのだが、そこに広がった世界は全く別物だった。その、周囲にきらめく星をしたがえた神秘的な土星の美しさは、今でも脳裏に浮かぶ。そして、TeleVue85は、そんな記憶上の美を、あっさりと目の前に展開してくれたのだ。

妙な言い方だが、輝く星は輝いて見えなければ、天体望遠鏡じゃないんじゃないかなぁ、と、本当に改めて考えさせられた望遠鏡だ。製品に、その卓抜した才能と情熱を惜しみなく注ぎ込まれたアル・ナグラー氏と、その製品を日本で紹介されているテレビュージャパンの天津氏に心からの謝意を述べたいと思う。

Coronado Filter について

悪天候が続く2004年は星見できないがゆえに鬱憤のたまる年で、部分日食が迫ったこともあって、日中時折姿を見せる太陽観測に食指が動いた。

太陽光の赤外線域Hα波は、太陽の大気上層部の高温プラズマの領域を成している電離水素ガス(プロトン+電子)。水素原子の主量子数が3から2の状態の間で生じるスペクトル線…などといっても門外漢にはチンプンカンプン。思うに、「芸術は爆発」で「自然は芸術」でもあり「爆発(エネルギー)は(時として)芸術(と呼びたいほどの美を放つ)」なのだ。その光の波長、656.279nm。この狭い帯域だけを、集光すれば火のつく太陽光から、目で見ても大丈夫な状態でフィルタリングしてくれるのが“コロナド・フィルタ”などのHαフィルタ。他にも2・3種あるようだけれど、米コロナド社製が最も手軽。ND4と星雲用のHαを組み合わせてもできそうなものだけれど、透過帯域の狭さの違いで、この専用フィルタにはかなわない(実は、実験してみたけのだれど、怪しげな、真鍮球のようなまがいもの画像しか出来なかった ─ 写真右)。

コロナドフィルタ SolarMax40とTV85用リング余談だけれど、コロナドフィルタの製造元コロナド社のあるアリゾナ州ツーソンは、かつてアサヒグラフの取材で尋ねた、通称「飛行機の墓場」ディビス・モンサン基地のある町。その後も数回訪問していて、どこか懐かしい気がする。航空機産業で散々培ったであろう金属加工技術などが、高温を封じ込める太陽観測機材に生きているのだろうか。TV85 + Coronado Blocking Filter BF10

こうしたHα太陽観測機材、一昔前には文字通り天文学的な価格だったそうだが、コロナドフィルタの出現でアマチュアの手に届くようになり、今やWWW上には多くのHα画像が公表されている。しかし、手が届くとはいっても、そうおいそれと買える価格ではない。私も、星見を始めた当初はその値段に目を剥いて、諦めていた。今回は部分日食を前にして、たまたま運良く中古が手に入っただけだ。撮影用だから中古でも比較的安心して購入して使えるのだが、目を焼いたら取り返しがつかないのだから、もし眼視が中心なら新品をお勧めしたい。特に学校などで使うのなら、PL法に絡んだ保険の問題もあることだし、入手・使用には細心の注意を払っていただきたいと思う。

妖艶なプロミネンス金属フィルタやND4フィルタを使っても太陽黒点は明瞭に写る。一方、プロミネンス(太陽から吹き上がる水素ガス。外周上で、燃え上がる炎のように見える、アレ)は太陽用のHαフィルタを使わないと無理。つまり、これは先ず道具があって初めて成立する画像だ。さらにその外側には淡いガスによるコロナがあるのだけれど、これは皆既日食でしか見えない。膨大なエネルギーを減らしてやるわけだから、必ずしも大口径が必要ではなく、例えばBORG50のような極小口径望遠鏡でもプロミネンスは観測できる。私の方法はTV85に40/BF10、つまり口径を40mmまで減らしている。一方、口径の大きな反射望遠鏡でも絞ることで使えないわけではないが、太陽光そのものが鏡を暖めてしまうから、筒内気流による像の乱れが酷いということは、想像に難くない。そういうわけで、BORGをガイド鏡としてOrion300mmに装着していることもあって、太陽のページは当分、TV85によるもののみになりそうだ。

How it looks like before adjust on the softwareでは、道具(フィルタ)があれば簡単に写るのだろうか。答えは否。デジタル撮影で画像処理を行って初めて、表面をうごめくように覆うプロミネンスが再現される。その画像は、燃え盛る太陽のエネルギーにあふれる妖艶さ。太陽観測にのめり込む方々がおられる理由が良く分かる。もう一つ、観測を始めて気づいたことがある。この暑さの下、直射日光にさらされながらの観測・撮影はかなりシンドイのだ。黒い機材はことごとく熱くなるし、E5000のリモコンHC-EU1は、一時的ながら液晶が黒ずんでしまった。が、何より、実はオッサン熊は氷点下の寒さよりも暑さに弱い。タラタラと汗を流していると、ひょっとしたら少しは中年太りのお腹がひっこむ…なんてこたぁない…かなぁ。


Copyright©Daisuke Tomiyasu 2001  ─南極熊写真メインサイト─